ボツリヌス治療 連載第8回 ご家族の方へ伝えたい「介護負担の軽減」というメリット

私は毎週、訪問診療も行っています。
その中で、脳卒中による麻痺や高次脳機能障害(思考や記憶などの機能低下)の後遺症がある患者様を、ご自宅で介護されているご家族に数多くお会いしてきました。

「しょうがない」と諦めていませんか?

在宅介護の現場では、以下のようなケースをよく目にします。

  • 麻痺があっても装具を使って歩けていた方が、筋肉のつっぱり(痙縮)が強くなり、次第に歩けなくなってしまう。
  • ベッド上で過ごす時間が長くなり、手足の関節が固まってしまう。

具体的には、
「指が握りこんで洗えない
「肘や肩が曲がって、着替えさせるのが大変」
「股関節が開かず、オムツ交換やズボンの着脱に苦労する」
「足がねじれて姿勢が崩れ、床ずれができてしまう」
といったお悩みです。

多くの場合、ご家族は
「脳卒中の後遺症だから、時間が経てば悪くなるのは仕方がない」
「寝たきりだから関節が固まるのもしょうがない」
と諦めてしまっているように感じます。

ボツリヌス治療で「介護のしやすさ」が変わる

しかし、こうした「困った状態」の多くは、ボツリヌス治療によって改善できる可能性があります。

実際に治療を受けたご家族からは、
「また歩けるようになった」
「指が開いて洗いやすくなった」
「着替えやオムツ交換が驚くほど楽になった」

といった喜びの声を多数いただいています。
中には、「足のことで相談に来たけれど、実は手や首の曲がりも諦めていたんです。それも治療できませんか?」と、追加でご相談をいただくことも少なくありません。
「もっと早く相談すればよかった」と言っていただけることは、医師として非常に嬉しい瞬間です。

目的は「生活の質」を高めること

ボツリヌス治療の目的は、単に筋肉を柔らかくすることだけではありません
「患者様ご自身が動きやすくなること」、そして「ご家族の介護負担が減ること」。
つまり、患者様とご家族双方の「生活の質(QOL)」を高めることが最大の目的です。

「どんどん動けなくなるのは仕方がない」「介護が大変になるのは当たり前」と諦めないでください。
「筋肉が固くなって介護が大変」と感じたら、まずは解決策の一つとして、痙縮治療を専門とする医師に相談してみてはいかがでしょうか。

渡辺 淳志
筆者プロフィール
【リハビリテーション部長】

渡辺 淳志 WATANABE Atsushi

出身大学: 琉球大学

  • 日本リハビリテーション医学会 リハビリテーション指導医
  • 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
  • 日本脳卒中学会 脳卒中指導医
  • 日本認知症学会 認知症指導医
  • 日本頭痛学会 頭痛専門医
  • 日本ボツリヌス治療学会 認定施注医
  • 医学博士号(甲)
  • 義肢装具等適合判定医
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