脳卒中によって片方の手足が動かしにくくなることを片麻痺(かたまひ)と言います。
歩行が難しくなった際、リハビリの現場でまず使われるのが、膝と足首を固定する長下肢装具(ちょうかしそうぐ)です。
人が立ったり歩いたりする動作は、実は非常に複雑です。
股関節、膝、足首といった複数の関節を、脳が瞬時にコントロールしなければなりません。
しかし、装具を使って膝や足首を固定すると、脳が集中すべきポイントが「股関節の動き」だけに絞られます。
これにより、歩行の練習が格段にスムーズになります。
装具で正しい歩行のリズムを脳や脊髄に伝えることで、脳卒中で損なわれた歩行パターンの再構築(作り直し)が進みやすくなるのです。
装具のステップアップと現状
練習が進み、膝のコントロールができるようになると、次は足首だけを固定する「短下肢装具(たんかしそうぐ)」へと移行します。
最終的に、リハビリを経て装具なしで歩けるようになる方は約半分と言われています。
残りの半分の方は、何らかの形で足首をサポートする短下肢装具を使いながら生活されています。
短下肢装具には、柔らかい素材のものから金属製のしっかりしたものまで、患者さんの状態に合わせた多種多様な種類があります。
痙縮(けいしゅく)が装具の邪魔をすることも
歩行能力を取り戻した方でも、その後30〜40%の確率で痙縮(筋肉のつっぱり)が起こると言われています。
- 足首が内側にねじれる(内反)
- 足首が伸びきってしまう(過伸展)
- 足の指が強く曲がる(クロウトウ)
といった症状です。
軽度のつっぱりであれば装具で抑えることができますが、痙縮が進行すると「装具の中に足が入らない」「装具をつけても歩きにくい」といった問題が出てきます。
ボツリヌス療法が助けになります
こうしたケースにおいて、ボツリヌス療法は非常に有効な選択肢です。
つっぱっている筋肉を注射で緩めることで、再び装具が正しく履けるようになったり、歩行が安定したりする可能性があります。
「以前使っていた装具が合わなくなってきた」
「足がつっぱって歩きにくい」
と感じる場合は、諦めずに痙縮治療を専門とする「ボトックス外来」などで相談してみることをお勧めします。
「歩くこと」が最高の予防に
また、ご自身で歩いて脳や脊髄に刺激を送り続けること自体が、痙縮の進行を抑える予防策にもなります。
片麻痺の後に歩行能力を再獲得できた方は、転倒に十分注意しながら、1日20〜30分程度歩く習慣をつけるのが理想的です。
装具を使っている方も、装具を正しく装着して室内を往復するなど、無理のない範囲で「歩行の運動習慣」を大切にしていきましょう。