脳卒中の後遺症として、筋肉が勝手に縮んでしまう「痙縮(けいしゅく)」が起こると、「歩きにくい」「着替えやオムツ替えなどの介助が大変になる」といった生活上の不便が生じます。
しかし、痙縮がもたらす問題はそれだけではありません。
実は、深刻な「痛み」の原因になることがあるのです。
痙縮が引き起こす「痛み」の正体
痙縮による痛みは、主に以下のようなメカニズムで発生します。
- 筋肉の引っ張り合い: 肩の周りの筋肉が過度に緊張して引っ張り合うことで、肩や腕に強い痛みが生じる。
- 関節への負担: 足が不自然にねじれたり曲がったりすることで、関節に過度な負担がかかる。
- 筋肉そのものの痛み: 縮みっぱなしの状態が続くことで、筋肉自体が痛みを発する。
こうした痛みは、患者さんが動こうとしたり、ご家族が介助で体を動かしたりする際に強くなる傾向があります。
すると、患者さんは痛みを恐れて動かなくなり、ご家族も「痛がらせるのがかわいそう」と動かすのをためらうようになります。
その結果、さらに筋肉が固まる(不動による悪化)という、負の連鎖に陥ってしまうのです。
「痛み」が心と睡眠に与えるダメージ
慢性的な痛みは、身体だけでなく「心」にも大きなダメージを与えます。
- 気力の低下: 気分が落ち込む、やる気が起きないといった「抑うつ状態」になりやすくなる。
- 慢性的な疲労: 痛みに耐え続けることで、常に疲れを感じやすくなる。
さらに深刻なのが「睡眠障害」です。
痛みのせいで眠りが浅くなったり、不眠になったりすると、以下のようなリスクが高まることが報告されています。
- ストレスが溜まり、イライラしやすくなる
- 免疫力が下がり、感染症にかかりやすくなる
- うつ病などの精神疾患のリスクが高まる
- 認知症のリスクが高まる
- 高血圧や糖尿病、脳卒中の再発などの生活習慣病を悪化させる
痛みの原因を知り、負の連鎖を断ち切る
もし痛みの原因が「痙縮」にあるならば、ボツリヌス療法(ボトックス注射)で原因となる筋肉を緩めることで、痛みが軽減・解消される可能性があります。
痛みが取れれば、動きやすくなるだけでなく、心の状態や睡眠の質も改善に向かうことが期待できます。
ただし、脳卒中後の痛みには別の原因(「片手症候群」など、飲み薬で治療するもの)が隠れている場合もあります。
「最近、手足に痛みが出てきた」「痛みのせいでリハビリや介護が進まない」といったお悩みがある場合は、一度リハビリテーション科などの専門医に相談し、痛みの原因を正しく診断してもらうことから始めてみてはいかがでしょうか。
原因に合った適切なケアを見つけることが、より良い生活への第一歩となります。