脳卒中後の筋肉が勝手に縮んでしまう「痙縮(けいしゅく)」は、手だけでなく足にも起こります。
足に痙縮が起こると、以下のような症状が現れることがあります。
- 足の指が曲がったままになる(専門用語で「クロウトウ」と呼びます)
- 足首が伸びきったままになる
- 膝が曲がったままになる
- 足首が内側にねじれてしまう
これらの症状によって、スムーズに歩けなくなったり、つまずいて転びやすくなったりすることがあります。
こうした歩行に関するお悩みに対しても、ボツリヌス治療は有効な選択肢の一つです。
過剰に緊張している筋肉にボツリヌス製剤を注射し、筋肉を緩めることで、歩きやすさの改善が期待できます。
また、歩行以外の生活動作にも影響が出ることがあります。
例えば、太ももが内側にねじれて足が開かなくなると、ズボンの脱ぎ履きが難しくなったり、介護におけるオムツ交換が大変になったりします。
症状が重い場合、両足が常に押し付け合う状態となり、その部分に床ずれ(褥瘡)ができてしまうこともあります。
こうした日常生活のケアに関する問題に対しても、ボツリヌス治療によって改善を図ることができます。
ただし、足への治療には非常に繊細な調整が必要です。
足の筋肉は手よりも大きく太いため、筋肉を緩めるには通常、多めの薬剤が必要になります。
しかし、量を多くしすぎて筋肉が緩みすぎると、身体を支える力が弱まり、かえって歩きにくくなってしまうケースがあるのです。
「筋肉の過剰な緊張は抑えつつ、歩くための力は残す」。
このバランスを保つためには、どこの筋肉にどれだけの量を注射するか、綿密な計算と医師の経験が必要になります。
なお、両足の痙縮が非常に強く、ボツリヌス治療だけでは十分な効果が得にくいケースもあります。
そのような場合には、筋肉を柔らかくする「バクロフェン」という薬を持続的に注入するポンプをお腹に埋め込む手術療法、「ITB療法(バクロフェン髄注療法)」が有効な場合があります。
「歩きづらくなった」「ズボンが履きにくい」「オムツ交換が大変」といった症状でお困りの際は、決して諦める必要はありません。
足の痙縮は、症状の程度によってボツリヌス治療から外科的なITB療法まで、様々な選択肢が考えられます。
「今の状態でもっと楽に動ける方法はないか」を知るために、痙縮治療に詳しい医師の話を聞いてみることは有益です。
手術が必要なケースであっても、連携体制の整った施設であれば、スムーズに次の治療ステップへとつなぐことができます。