脳卒中の発症後、特に麻痺している側の手が強く握りこんでしまい、「爪が切れない」「手が洗えない」といった症状にお困りの患者さんや、その介助をされているご家族も多いのではないでしょうか。
なぜ、脳卒中後に「手が勝手に強く握りこんで開かない」ということが起こるのでしょうか?
これは、脳から筋肉への命令がうまく届かなくなることで、指を曲げる役割を持つ「浅指屈筋(せんしくっきん)」や「深指屈筋(しんしくっきん)」という筋肉が、勝手に強く縮んでしまうために起こります。
一度強く握りこんでしまうと、患者さん自身の力では開くことができません。
また、介助するご家族が頑張って開かせようとしても、ほとんど開かないこともあります。
そのため、「手の握りこみは治らないもの」と諦めてしまっている方も少なくありません。
手の握りこみ以外にも、脳卒中後には以下のような症状が出ることがあります。
- 手首や肘が曲がったままになる
- 肩が開かなくなる
こうした「痙縮(けいしゅく)」の症状が出ると、着替えや身体を洗うことが難しくなるだけでなく、痛みを伴うケースもあります。
また、肘が曲がっていると身体のバランスが崩れ、歩く時に人や物にぶつかってしまう危険性もあります。
こうした症状に対して、原因となっている筋肉へピンポイントに「ボツリヌス注射」を行うことで、症状の緩和が期待できます。
頑固に開かなかった指が軽く開くようになったり、曲がっていた手首や肘、肩が伸びやすくなったりと、ボツリヌス治療によって多くの改善例が見られています。
ただし、指や手首を動かす筋肉は細く、皮膚の深い場所にあるため、注射には非常に繊細な調整が必要です。
ミリ単位のズレもなくし、治療の効果を最大限に発揮させるためには、筋肉の場所を正確に特定する「超音波検査機器(エコー)」や「電気刺激装置」の使用、そして専門的な技術を持った医師による施術が重要になります。
「手が握りこんで開かない」「手首や肘が曲がってしまった」といった症状が出ても、「脳卒中の後遺症だから仕方がない」と諦めないでください。
まずは、専門的な技術を持つ医療機関で、現在の症状について意見を聞いてみることから始めてみてはいかがでしょうか。