脳卒中は、突然命を脅かす恐ろしい病気です。
例えばくも膜下出血は、社会復帰できるのは3分の1以下、残りの3分の2は亡くなるか、あるいは寝たきりになってしまうと言われています。
治療には頭を開けて処置する「開頭術」や、カテーテルを用いる「血管内手術」がありますが、どちらも決して簡単な手術ではありません。
脳出血や脳梗塞も含め、まずは命を救えた(救命できた)だけでも、医療としては大成功したと言えます。
救命の「その先」に待ち受けるさまざまな後遺症
しかし、救命の「その先」には、厳しい現実が待っていることも少なくありません。
手足が動かなくなる「麻痺(まひ)」、思考力や記憶力が低下する「高次脳機能障害」、言葉をうまく操れなくなる「失語症」などの後遺症が残ることは比較的よく知られています。
こうした障害に対しては、リハビリテーション病院に数ヶ月間入院し、集中して訓練を行うのが一般的です。
患者さんの3割以上に現れる「痙縮」とは
一方で、意外と知られていないのが「痙縮(けいしゅく)」という後遺症です。
実は、脳卒中を経験した患者さんの30〜40%にこの痙縮が現れると言われています。
しかし、インターネット上にも情報が少なく、患者さんやご家族にほとんど認知されていないのが実情です。
痙縮とは、脳のダメージによって筋肉の緊張が強くなりすぎてしまい、手足が勝手に突っ張ったり曲がったりしてしまう状態を指します。
ここで問題となるのが、日本のリハビリテーション病院の中で、この痙縮の専門的な治療ができる医師は10%程度にとどまると言われている点です。
多くの病院に「痙縮治療の専門家」がいないのが現実なのです。
放置すると元に戻らない「拘縮」に進行する恐れも
痙縮を治療せずに放置すると、やがて関節が固まって動かなくなる「拘縮(こうしゅく)」という状態に進行します。
手が拘縮すると物が握れなくなり、肘や肩が拘縮すると、着替えが難しくなったり歩行中に人や物にぶつかったりします。
足が拘縮すれば、歩くことや、オムツの交換さえ難しくなってしまいます。
そして、拘縮まで進んでしまうと、基本的には元に戻す(治す)ことが難しくなります。
だからこそ、元に戻らなくなる「不可逆的な拘縮」になってしまう前に、適切な痙縮の治療を始める必要があります。
「後遺症だから」と諦めず、専門の医師にご相談を
肩や肘、指、足首などが固くなっていく様子を見て、「脳卒中の後遺症だから仕方がない」と諦めてしまう必要はありません。
「痙縮であれば、適切な治療で改善できる可能性がある」ということを知っていただきたいのです。
もし心当たりがある場合は、ぜひ痙縮の治療を行っている専門のリハビリテーション科医にご相談ください。