脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)の発症から3〜6か月が経過した頃に、手足の筋肉が硬くなる「痙縮(けいしゅく)」という症状が現れたり、悪化したりすることが多くあります。
これはちょうど、脳外科や神経内科での治療を終えて自宅に退院した時期、あるいはリハビリ病院を退院して外来通院や訪問診療を利用している時期に重なります。
時間が経つにつれて、以下のような手足のトラブルが現れやすくなります。
- 手の問題: 指先がうまく動かせない(細かい作業がしにくい)、肩や肘が硬くなって着替えが難しい
- 足の問題: 歩くときにつまづきやすい、膝がガクッと折れて転びそうになる
こうした症状を
「脳卒中の後遺症だから」
「年齢のせいだから」
と諦めてはいけません。
早期であれば治療で改善できる「痙縮」を放置してしまうと、関節が完全に固まって動かなくなる「拘縮(こうしゅく)」という、回復が難しい状態になってしまいます。
治療を受けているのは、対象者のわずか2%未満
現在、日本には治療が必要な「脳卒中後の痙縮」の患者様が約50万人いると推定されています。
しかし、その中で実際に適切な治療を受けられている方は1万人にも満たないのが現状です。
なぜ、これほど治療が進まないのでしょうか。
主な理由は以下の3つです。
- 「痙縮」という病気や症状が、患者様やご家族にまだあまり知られていないこと
- 痙縮を適切に診断できる医師が不足していること
- 痙縮の専門的な治療を行える医師が少ないこと
その結果、治療すれば良くなるはずの症状が放置され、一生元に戻らない「関節の拘縮(こうしゅく)」を後遺症として抱え続けることになってしまっているのです。
最も大切な「治療のタイミング」とは?
そうした不幸な結果を防ぐためには、脳卒中の発症から3〜6か月後、つまり
「病院を退院した後」や
「外来・訪問診療での療養中」に
症状が出やすいことを知っておく必要があります。
手足に突っ張りや動かしにくさを感じたら、「治療すれば改善するものだ」とご理解いただき、早めに専門医へ相談することが大切です。
また、普段診てくれている急性期病院の先生や、かかりつけ医(開業医)の先生にとっても、この退院後のタイミングこそが「患者様を痙縮の専門医へ紹介する最適な時期」となります。
実際の治療方法と通院のイメージ
痙縮の代表的な治療法である「ボツリヌス療法」は、通常3か月に1回のペースで継続します。
一般的には、普段かかっている脳外科や神経内科、お近くのクリニックに通院しながら、3か月に1回だけ痙縮治療のためにリハビリテーション病院の外来を受診する、という形で併診(並行して通院)することが可能です。
「脳卒中の治療が終わって退院できた」
「リハビリが終わって自宅に戻れた」
からといって、そこで安心してしまうのは禁物です。
退院した後にこそ、手足の痙縮が起こりやすくなります。
放置すれば治らない「拘縮」になってしまいますが、適切な時期に治療を始めれば、症状はしっかり改善させることができます。
ぜひこのことを知っていただき、気になる症状があれば我慢せず、早めにかかりつけ医や専門医にご相談ください。