脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの「脳卒中」になられた患者さんの中には、発症から数か月が経過してから、手足が勝手に固くなってしまうことがあります。
なぜ、時間が経ってからこのような「痙縮(けいしゅく)」という症状が起こるのでしょうか?
通常、私たちの筋肉は、脳や脊髄からの命令によって縮んだり緩んだりしてバランスを保っています。
痙縮は、このバランスが崩れ、筋肉が過度に縮んだままになってしまう状態です。
脳卒中後にこのバランスが崩れてしまう詳細なメカニズムは、まだ完全には解明されていませんが、現在は大きく分けて次の3つの要因が考えられています。
- 脳からの信号が届かない
脳から筋肉へ「動け」と命令を伝える運動神経が傷つき、信号がうまく伝わらなくなることで、筋肉のコントロールができずに固くなってしまう。 - 筋肉のセンサーが過敏になる
筋肉には、自身の伸び縮みを感知してバランスをとる「筋紡錘(きんぼうすい)」というセンサーがあります。
筋肉が使われない状態が続くと、このセンサーが過敏になり、「もっと固くなれ」という間違った命令を出し続けてしまうことで、痙縮が悪化していく。 - 脊髄からの命令が強くなりすぎる
筋肉は「脳からの命令」と「脊髄からの命令」の両方で動いています。
脳からの命令(制御)が弱まると、相対的に脊髄からの「筋肉を縮ませる命令」が強くなってしまい、その結果、勝手に筋肉が縮んでしまう。
では、手足が勝手に固くなるこの「痙縮」を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。
最も大切なのは、「手足の筋肉に刺激を与えること」です。
- 動かせる場合: 毎日、しっかりと手足を動かしてください。
- 麻痺がある場合: 動くほうの手を使って、動かない手足をしっかりとストレッチしてください。
- 自分で行うのが難しい場合: ご家族や介護される方が、毎日手足をしっかりとストレッチしてあげてください。
このように筋肉を動かして刺激を与えることで、関節が固まっていくのを防ぐことができます。
それでも「手足の筋肉が固くなってきた」と感じる場合は、痙縮を専門とするリハビリテーション科医などにご相談ください。
また、痙縮がまだ初期の段階で、筋肉のこわばりが軽いようであれば、肩こりなどに使う振動マッサージ機で、固くなった部分を毎日10分程度ほぐしてあげることも、進行を遅らせる効果があると言われています。